2019年1月の本

今月は以下。

『世界という背理』(竹田青嗣

企業価値の神秘』(宮川壽夫)

肉体の悪魔』(ラディゲ・中条省平 訳)

 

世界という背理―小林秀雄と吉本隆明 (講談社学術文庫)

世界という背理―小林秀雄と吉本隆明 (講談社学術文庫)

 

 吉本隆明小林秀雄。名前はめちゃくちゃよく目にするし、なんかとりあえずすごい人なのは知ってるけどその思想まではちゃんとわかってない人たち。だったけど、この本のおかげでちょっとわかった。スーパー雑に言うと、小林秀雄「個人の絶対性、感性、それすなわち悲劇…」な人で、吉本隆明「いや、言うてもなんらかの客観性・共通性がないとなぁ…」という人っぽい。小林秀雄に関しては、『考え方のヒント』の中で美術について書いてるのを数年前に読んだ時にあんまり納得いかなくてモヤッとしたことがあるので、俺はもうちょい吉本隆明をちゃんと読んだらバランスがとれるのかもしれない。(ところで文春文庫の『考えるヒント』はタイトルの付け方からして、サラッとした人生論とかそのテの本かと思って手にしたらガチガチの芸術論で放り投げる、という人が多そう。どこが「ヒント」なの、あれ?)

 

何はともあれ、もうちょっと勉強したい。でもこの世代の人たちについてやろうとすると、よう知らん世代論とか、「文壇すったもんだ」みたいのがついてくることが多くて、そこがな。そういうのも個人の思想と不可分だ、と言われたらそうなのかもしれないけど。

 

企業価値の神秘

企業価値の神秘

 

 一応仕事用の本として買ったけど、すごく面白かった。数式見ただけでクラクラしてくるタイプの人間でも読み通せるように書かれている。「あーこれ講義でも笑いとってんだろうな」っていう感じの語り口で(時々いかにも大学の教授がウケ狙いで言って滑りそうな感じもあるが、ご愛敬)、大変に読みやすい。この講義を受けられる学生はラッキーですね。この手の本でこういうリーダブルな読み物になっているやつは貴重。値段はそれなりにする(3500円。メルカリでもうちょい安く買った)が、その価値はあると思う。同じようなジャンルで売れてる『バリュエーションの教科書』より読みやすいんじゃないかな。立ち読みで比べただけだからわからないが。向こうはあくまで「教科書」だしね。ちなみに今の仕事の前に、野口真人さんの本ファイナンスはちょこっとかじっていた。内容としてはこっちの方が一般向けで簡単。でもやっぱり実務に役立てようと思って読むほうがスッと頭に入ってくる。


それにしても、勉強すればするほど、個別株投資なんて俺には無理だと思ってしまうよ。ファンドマネージャーってすげえ。俺はおとなしく「投信でほったらかし資産形成♪」みたいなホンワカしたやつをやりますわ。

 

 

肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

 

 ブックオフで300円。いいのか、古典の名著が。話の筋だけ言えば、年上の人妻に手出しちゃいました、妊娠させちゃいました、ってゲスの極みなんだけど、15歳と19歳だからね…えぇ…って感じではある。そして15歳とは思えない至言のオンパレード。「彼女は僕に救助してもらいたいのか、それとも一緒に溺れて欲しいのか、僕にはわからなかった。」なんて、俺にもわかんねえよ。冷徹な観察眼と自省の力がありながら、幼さゆえの身勝手も全開なので、本当に恐ろしい。

ちなみに寝取られた旦那はろくに顧みられず、「まあ所詮タイミングみたいのでラッキーで結婚できた甲斐性無しだから」みたいな扱いでひたすらかわいそう。