堀江敏幸『河岸忘日抄』

いつ読んだかいつ感想を書いたかもあんまり覚えてないが、Evernoteに転がってたから放出しておく。
 
 
昨年仕事を辞めた後、半年くらい無職だった。「充電期間だね」と言ってくれた人もいたが、そんな風に意味のあるものとして捉えたくない時もある。
ただの足踏みの時を過ごすことのよく意味を考えた。
 
仕事に疲れた主人公が、かつて縁のあったフランスの老人が所有し、河岸に係留された船に仮住まいをするというなんともオシャンな設定。
大きな起伏はないが、非日常の話である。こういうのは「ハレ」とは言わないのだろうか?
日常からの一時戦線離脱。モラトリアム。なんて甘美な響き。
プッツァーティの『タタール人の砂漠』が、待つことの愚かさを説いた物語なら、こちらは待つこと、ためらうことの贅沢さを描いた物語だろう。
とにかく決断し、行動することこそが優秀さの証だとされる社会の中で、ためらうこと・人生にポーズをかけることの意味は軽視されているように思う。
 
無職期間に読むべきだった小説かもしれないが、次の停泊期間が来たらまた読み返そう。